AI(人工知能)はもはや単なる「流行りのツール」ではなく、企業の生産性や競争力を大きく変える力を持つ技術です。とは言え、単に最新のAIモデルやツールを導入すれば成功するわけではありません。むしろそこに注力しすぎて本質を見誤る企業が多いのが現実です。
経営コンサルティングの世界では、AI変革に成功している企業に共通するリソース配分の指針として、「10-20-70の原則(原則)」 という考え方が広く紹介されています。これは、AI戦略の優先順位と投資配分を示す、非常に実践的なフレームワークです。
10-20-70の原則とは
この原則は、AIを企業価値の向上につなげるために、取り組むべき要素とその比率を示しています。
- 10%:モデルとアルゴリズム
AIの頭脳にあたる部分です。どのAIモデルを使うか、どう設計するかがここに入ります。近年は高性能なAIモデルが広く使えるようになっており、この部分にリソースを偏らせ過ぎる必要はありません。 - 20%:データとテクノロジー基盤
AIは「データを材料にして学習」します。つまり質の高いデータを用意し、AIが使える形に整備すること、またそれを支えるITシステムやセキュリティの仕組みを整えることがこの領域です。 - 70%:組織変革と人材育成
最も重要な部分がここです。AIを使いこなす社内の仕組みづくり、従業員のスキル向上、業務プロセスの再設計、そして文化としてAIを受け入れていくことに大きく投資する必要があります。これが成功の鍵であり、10-20-70の原則で最も重視される部分です。
この比率が示すように、単にツール選びに走るのではなく、「人と仕組み」への投資が成果を決める という考え方が、この原則の核心です。
なぜ「組織・文化への投資」が重要なのか
多くの企業がAIへの取り組みに失敗するのは、ツールの導入や技術的な実装に力を入れるあまり、現場の定着や日々の業務への浸透を軽視してしまうケースが多いからです。現場の人たちがAIを理解し、活用できるようになるまで支援する仕組みづくりが欠けると、せっかくの投資が十分な価値を生み出しません。
この点を “料理” に例えると、とても分かりやすくなります。
最高級の調理器具(AIツール)と新鮮な食材(データ)を揃えても、シェフ(従業員) と厨房の動き(業務プロセス)が整っていなければ、美味しい料理は完成しません。 このシェフの技術や厨房の仕組みづくりこそが、AI活用の成果そのものと言えるでしょう。
成功企業はどう取り組んでいるか
BCGなどの調査によると、10-20-70の原則に従ってリソース配分をしている企業ほど、AIの活用を成果につなげています。また、本質的な成果を上げる企業は、単なるツールの導入だけでなく、業務プロセスの見直し、組織内でのAIリテラシー向上、経営層からの明確な方針提示を行っていることが共通しています。
つまりAI活用は 「技術の導入」ではなく「働き方・組織の変革」 の取り組みなのです。
中堅・中小企業が押さえるべきポイント
- AIは万能ではない:まずは自社の課題を整理し、「AIで何を実現したいのか」を明確にすること。
- データは基盤であり財産:精度の高いデータを整備することが成果につながる(例:顧客情報や業務ログの標準化)。
- 人材育成は継続投資:社内のスキルの底上げ、AIの活用法を学ぶ機会と仕組みづくりを。
- 経営判断と現場の協働:経営層がビジョンを示し、現場が使いこなせるよう支援する体制を用意すること。
AIは単なるツールではなく、企業の競争力をつくり直すエンジンです。その力を最大限に引き出すためには、“人” と “組織” という最も大きな資源 に丁寧に向き合うことが、何より重要になります。
